利休にたずねよ(映画)の無料動画フル配信｜DVDレンタルよりオススメ

利休の新たな一面が観れ、泣けるところもあり見応えのある作品でした。それにしても、全て国宝や重文クラスの茶道具を使用するとは、贅沢な時間を過ごさせて戴きました。

配役、脚本、描写、音楽、すべてにおいて、興味深くて素晴らしかったです。何度も観てしまうほど、細かな配慮がされており、観るたびに新しい発見がある作品です。

裏千家も相当監修しているに違いない。きとんと渋いものは渋くと安っぽい映画にしていないのが良かったです。

利休を主役とした映画はこれまでに何本かありますが、若い時の利休の青春時代が描かれたのは本作くらいかと思います。それを市川海老蔵さんが演じており、とても良かったです。歌舞伎をやったり、俳優をやったり、いろいろ幅広い方だなと再認識しました。

『利久にたずねよ』は田中光年監督の2013年公開の映画で、山本健一さんの小説を原作としています。本作は2013年のモントリオール世界映画祭で最優秀芸術貢献賞を受賞しました。 千利休役に市川海老蔵さん、お茶の師匠の武野紹鴎は父親の市川團十郎さんがされているところが見どころです。市川團十郎さんがお亡くなりになり、これが最後の親子共演になりました。大森南朋さんが演じている豊臣秀吉の破天荒さと強欲さに利休の水を張った盆のような静かさが対峙して、とても心が乱されます。利休に奥さんや娘がいたことも驚きですが、利休がどうして利休となり得たかということを過去を振り返る形で回想し、少しずつ分かっていくような構成になっています。利久には妻の他に愛する人がいたわけですが、それを知っていて中谷美紀さん演じる宗恩はどうして夫に尽くしたのか。美しいとはどういうことなのか。どうして利休に何度も諭され、助けられた秀吉は利休を殺すことを選んだのか。歴史物語が好きな人はもちろん、苦手な人でも感動すること間違いなしです。きっと利休は自分の人生を変えるような恋で一生分のエネルギーを若い時に使ってしまったのかもしれないですね。ずっと喪に服していたんでしょうね。悲しいですが、美しいお話です。

私は利休にたずねよを観て、キャスティングの素晴らしさを感じました。私は千利休は教科書でしか見たことがありません。教科書と自分のイメージの中で想像して千利休を見事に市原海老蔵が体現化していました。市原海老蔵は歌舞伎役者と言うこともあって、目力の強さや表情で語りかけることができると本作品を観て思いました。本作品をみた半分ぐらいの人は市原海老蔵が千利休のはまり役だと感じたと勝手ながら思います。私の千利休のイメージはすでに市原海老蔵です。ここまで、視聴者に役柄のインパクトを与えて市原海老蔵の演技とキャスティングにあっぱれです。また、もう1人はまり役がいました。それは織田信長を演じた伊勢谷友介です。織田信長は数々の俳優が演じてきた武将は1人です。しかし、私は伊勢谷友介が1番のはまり役だと思いました。なぜなら、私が思う織田信長が根っからの悪人だからです。伊勢谷友介が根っからの悪人とは思いませんが、目の奥に何かを隠していそうな表情や言葉の節々に込められていた悪人魂を感じたからです。勿論、役として演じている為、全て演技ではありますが、演技が妙にリアルティーである、本当の伊勢谷友介も心の奥に悪人魂があるのではないかと、思い知らされる演技力でした。

一言で表現するならば、「日本の美しさ」が詰まった作品だと思いました。静けさの中で生まれる熱い情熱を感じられる作品でした。また、市原海老蔵さんの所作は、とても美しく、さすがだな。と思いました。現在は、ネットなども盛んになり、すぐにメールや電話などで、相手に思いを伝えられるようになりましたが、この時代は、「言わないこと」で思いを伝えたり、言わないけど、確かに伝わってくる思いを感じることができたり・・・。そんな熱い思いをそれぞれの役から感じることができました。利休が大切にしている「不足の美」（不完全だからこそ美しい）という考えはとても素敵だと感じます。私たちは、ついついカッコつけて、何者かになろうとし、ネガティブな一面を隠してしまいがちですが、そのもがきや苦しみさえも美しいのだな、と思います。こんな時代だからこそ私たちが忘れてはいけない、「相手を思う気持ち」を大切に感じたいですし、日本人にしか醸し出せない独特の「間」みたいなものが、伝わってくる作品だと思います。襖一枚ですぐに隣の音が入り込んできますが、だからこそ、静かに丁寧に心を込めてということを大切にできなのかなと思います。私たちが忘れかけていたものを思い出させてくれる作品だと思います。