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ホラー・パニック

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紀子の食卓(映画)の内容

映画『紀子の食卓』は、2016年9月に公開されました。

原作・脚本・監督は、世界中の映画祭で高い評価を得ている鬼才・園子温さんが務めました。また、彼が手掛けた2001年公開映画『自殺サークル』の、その後の世界が舞台となって描かれております。

本作は『自殺サークル』に登場した掲示板サイト“廃墟ドットコム”を用いて、崩壊してしまった現代家族の闇が描かれており、その家族を吹石一恵さん、吉高由里子さん、光石研さん、宮田早苗さんの四人。彼らを取り巻く人々をつぐみさん、並樹史朗さん、三津谷葉子さん、安藤玉恵さん、渡辺奈緒子さん、季 鐘浩さん、古屋兎丸さん、手塚とおるさんが演じております。

タイトルからは想像できないほど、中身の濃い作品でした。主演者の皆さんが凄く個性的で良い演技をされていたと思います。知らなかったんですが、つぐみさんという女優さん引退された方なんですね。凄く惜しいです。

不気味で気味が悪い音がクセになり、自分語り中心のチャプター構成は面白い演出だと思います。

ほんと園子温はイイ意味でやばいよね。血だらけのシーンは現実かどうかわからなくなる。園子温ワールドが堪能できる逸品。

見応えがあり、家族の嫌なところを見せられ、考えたくもないですが、考えさせられる映画でした。かなり最悪な気持ちになったけど、すごく面白かったです。

あらすじ

田舎に住む17歳の女子高生・島原紀子(吹石一恵)は、新聞記者の父・徹三(光石研)、専業主婦の母・妙子(宮田早苗)、妹・ユカ(吉高由里子)の四人家族。家族との関係に違和感を覚えながら、田舎暮らしでの唯一の楽しみは「ミツコ」と名乗りインターネット掲示板『廃墟ドットコム』に入り浸ること。

ある日、東京の大学に進学することを反対された紀子は、サイトで知り合ったリーダー的存在の「上野駅54」を頼り、東京への家出を敢行します。東京に着き、「上野駅54」ことクミコ(つぐみ)と出会った彼女は、紀子という人格を捨て『レンタル家族サービス』のミツコとして生きていくことになります。

ユカは、姉の紀子の行方を探しており『廃墟ドットコム』に辿り着くと、「ヨウコ」と名乗って入り浸るようになり、姉の後を追う形で家出をします。そして『レンタル家族サービス』のヨウコとなったユカは、そこでミツコとなった姉と再会を果たします。

一方で、娘二人が家出したことに責任を感じ、母の妙子は自殺してしまいます。父の徹三は娘たちの家出をそそのかした「上野駅54 / クミコ」の存在を知り、正体を暴く事に執念を燃やします。

やがて、クミコの誕生の秘密、廃墟ドットコムのメンバーが行方不明になっていること。そして、娘たちの消息を掴んだ徹三は、ひとつの賭けに出ようとしています…。

見どころ

159分でも飽きない設定

本作は、『紀子編』・『ユカ編』・『クミコ編』・『徹三編』とそれぞれの章ごとに、ナレーションと目線が変わっていきます。紀子の章でのナレーションは紀子役の吹石一恵さんが行い、登場人物の持ち味や雰囲気、背景などもそこに投影されているため、飽きが全くきません。

上映時間が159分にも関わらず、章ごとに目線が変わるため、中だるみもなく、長いとも感じさせずにあっという間に見終わってしまう作品に仕上がっております。

出演陣の熱演

紀子役の石吹一恵さんの不思議な魅力、ユカ役の吉高由里子さんのみずみずしさ、その二人の父・徹三役の光石研さんはどんな役も幅広く演じる方で安心感すら覚えます。

また、園子温監督が以前手掛けた『自殺サークル』のコミックを務めた漫画家・古屋兎丸さんが出演しているコアなシーンも見逃し厳禁です。

そんな中で、クミコ役のつぐみさんの鬼気迫る迫力は見事。恐怖すら覚える演技は本作の最大の見どころになっております。

スタッフ

原作・脚本・監督:園子温
エグゼクティブプロデューサー:諸橋裕
プロデューサー:鈴木剛
撮影:谷川創平
録音:池田知久
美術:藤田徹
編集:伊藤潤一
音楽:長谷川智樹
衣裳:横山一美

キャスト

島原家

島原紀子 / ミツコ:吹石一恵
田舎での生活や家族関係に不満を持っており、東京への憧れが強い女子高生。ある日、父と進路のことで対立し、サイトで知り合った女性を頼って東京への家出を敢行してしまう。

島原ユカ / ヨーコ:吉高由里子
紀子の1歳年下の妹。紀子が失踪してから数か月後に、紀子と同じサイトを利用し、自身も追うような形で家出をする。

島原徹三:光石研
紀子とユカの父。保守的な考えの持ち主。ローカルネタを扱う地元の新聞記者兼編集長。

島原妙子:宮田早苗
紀子とユカの母。趣味は絵を描くことで、優しい性格の持ち主。娘二人が相次いで家出したことにより自分を責めるようになる。

紀子と親しいサイト仲間

クミコ / 上野駅54:つぐみ
人材派遣会社で働く24歳の女性。サイト利用者の少女たちに的確なアドバイスを送る姉御的存在。

決壊ダム:安藤玉恵
レンタル家族でステージの高い役を担う、明るくてきっぷの良い性格の女性。

その他のサイト仲間

廃人5号:渡辺奈緒子
ろくろっ首:あべちひろ
深夜:小貫華子
三人とも現役女子高生らしくいつもセーラー服を着ている。

その他

みかん:三津谷葉子
紀子の小学校時代の友達。現在は地元のイメクラ嬢。

良:藤間宇宙
ユカの高校のクラスメイトの男子。

ひげの男:手塚とおる
ギャンブル好きの不潔な男性。

喫茶店の男:古屋兎丸
クミコが勤務する会社の社員。

池田:並樹史朗
徹三の知人。徹三に頼まれて協力をする。

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紀子の食卓(映画)の感想

40代女性
40代女性

お父さんが可哀想すぎやしないか?本作を見終わって、一番心に残った感想です。物語りのはじまり、冒頭は、とてもほのぼのとしていて、すごく穏やか雰囲気でストーリーが進んで行くのですが、中盤辺りから一気にセンセーショナルな感じに変わり驚きました。この後、ストーリーがどのように展開し、進んで行くのか、そして、どんな結末をむかえていくのか、全く想像ができませんでした。最初の印象が明るく感じた為、余計に、エンディングやストーリーが進む際の闇や、暗さに戸惑いを感じましたが、思春期世代の、染まりやすい心の危うさや、彼女達が生業にするレンタル家族に対する独特の違和感。社会の裏側の、そこで生きる人間の思想、みたいな、何というか、洗脳や、新興宗教にも似たような怖さや、ほの暗さを感じました。何が正解か分からず、でも、誰かの癒しや、慰めにもなっている。でも、誰も本当に幸せになっていない。全体的にシリアスな内容で話しは進みますが、語り手が変わり、クローズアップされる人物像も変わっていくので、飽きる事なく、テンポよく、視聴する事ができました。今はメジャーな俳優さん達の若い頃も見る事もできて、お得感があります。キャストはすごく豪華です。

20代女性
20代女性

まず一言で言うととても凄まじい映画だった。ナレーションをベースとして淡々と進んでいく物語で、159分と少し長めだが気付いたら終わっていた。ナレーションベースというのもありそれぞれの主人公の心の声を常に聴いているかのような状態でそこに共感があったり、わからない部分があったり、非常に人間的だった。あまり起伏もなく淡々と進んでいくのだが内容が濃い。とにかく濃い。私は家族に対するコンプレックスがあるのだがこの映画を見終わった頃には号泣していた。家族とは何なのかということを改めて突き付けられた。親は選べないし、もちろん親は子を選べない。その親の元へ生まれてきたことで背負うべき運命、そんな理不尽さから逃げ出そうとする主人公の気持ちがなんとなくわかるような気がした。自分という存在、自分の居場所、それらを求めて彷徨う若者の気持ちが細かく表現されていたように思う。そのため、共感できるかそうでないかは別れる気もする。内容自体も明るいものではないので重たいものを好まない人には向かないかもしれない。見終わった後に心にズシンとくる何かがあった。園子温監督の作品ではかなり好きな方だった。園子温監督特有のちょっとグロイシーンもあるが、他作品と比べるとそれほど多くはなかったのかなと思う。ストーリーがしっかりとしていたため集中して見れた。家族とは何か、と迷った時に見てみるとかなり心打たれる。

30代女性
30代女性

作品冒頭で、銀座を歩く紀子の様子が、田舎から出てきた人の感じがよく出ていて良かったと感じました。紀子目線で語られる家族の内情がわかりやすく、おとなしそうにみえるも、行動力のあり改革派のような紀子がすごいなと、当初こそ感じていましたが、段々と話の流れで、紀子自身自分に酔ってる感じが若干イッちゃってるようで怖いなと感じました。クミコと出会ってからの紀子はますます宗教じみてきて、”上野駅54″というハンドルネームの意味がわかったときは目を背けたくなるくらいの残酷さを感じてゾッとしました。語り手が妹のユカにうつってからも、盛り上がりがなく単調なものの、わけのわからない底知れぬ恐怖だけが漂っている感じでした。唯一マトモに見えたのが父の徹三だけで、彼がいなかったらこの一家はますます闇の中にいる感じじゃないかと思うほど、徹三の存在が貴とても貴重に、そして印象的に感じられました。ラストに向けて残酷なシーンがいくつかでてきましたが、ここでも徹三の存在感が一層際立ってました。ラストは、ある人物のその後の行方がとても気になりますが、幸せであってほしいと願うばかりです。社会問題や、家族のあり方を斬新な視点で考えさせられるような作品です。

20代女性
20代女性

題名からはほんわかエピソードを連想されますが、園子監督が手がけた作品なので、そうはいきません。最初は、主人公がそのシーンでの心境を早口で語っていて、画面を見ていなくてもストーリーが追えるほどでした。同じ監督が手がけた「自殺サークル」の続編のようですが、観ていない私でも、十分楽しめました。とにかく、主人公の吹石一恵の美しさとその妹の吉高由里子の透明感に引き込まれました。最初は、主人公が海に近い地元で妹と一緒に通学している爽やかなシールが多かったのですが、チャット友達に会うために上京したことにより、だんだん可笑しな世界に引き込まれていきます。その正反対さが逆に、観ていてとても、はらはらして辛い気分になります。主人公たちがしているいくつもの家族レンタル業を見ていると、人間はただ与えられている役割を演じているだけなのかもしれないという気持ちになりました。失踪してしまった2人の娘を会社を辞めてまで追い続けるあまり、父親は妻さえも失ってしまいます。あのまま何もしないで待っていても、2人は帰ってこなかったろうし、その居場所を突き止めた父親の執念にも注目です。作品を通してそこまでグロテクスなシーンは少ないので、園子作品は少し苦手という方にもおすすめです。

30代女性
30代女性

1人語りによるチャプター構成が不思議な映画だ。吉高由里子と吹石一恵が若い。主人公は吹石一恵演じる17歳高校生、ノリコは大学受験先について揉め、生き方の分岐点に立たされている。現状にイライラしつつ、何がしたいか、具体的にはわからない。なぜかおどおどしているけれど思い込むと猪突猛進の紀子。学校のパソコンの使用権を獲得すると、「廃墟ドットコム」のサイトを通じて本来の自分らしさを獲得したようなつもりになった。家の停電の隙に、憧れていた東京へ行く。そこで、サイトの住人クミコに会う。クミコは、不思議で危ない人。過去を捨て、新しい自分をつくる。クミコ家族のふりをするレンタル家族を生業にしていた。ノリコの様子から、ユカもノリコやクミコとともにレンタル家族をやっていく。そんな中、ノリコたちの父親はノリコの元へ行くが…結末はちょっと意外で切ない。正解なんて、あるのだろうか。人の「役割」とは何だろうか。本当の自分をどれほど理解しているのか。いろんな人の心の闇がある。憧れ、後ろめたさ、孤独感、嫌悪感、焦燥、愛情への飢え。この物語は、そこからの離脱の中の一つのパターンだ。ここではない自分ではない、誰かに。全体的に、ユカの「人は楽になりたいだけなの」の言葉がとても印象的。

40代女性
40代女性

同じ監督の「自殺サークル」の続編的な作品です。田舎の高校に通う紀子。望んでいる進路には父親から反対され、家出をします。以前からネットで知り合っていた女性と出会い、彼女と「レンタル家族」の仕事をすることに。このレンタル家族の仕事をしているところが非常に興味深いです。紀子は家にいた頃は父親とうまく話すことができませんでした。東京に出たい、という望みもうまく話すことができなかったんですよね。しかし「レンタル家族」という「役」を演じていると軽快に話すことができるのです。核家族化が進んだ現代において、家族はそれぞれが「役割」を持とうとします。「娘の『母親』」「〇〇家の長女」といった風に。しかし、本来は家族であってもそれぞれがひとりの個人です。それが家族の中で受け入れられなかったとき、関係性は破綻します。「母」「父」「子」ではなく「私」を家族の中で構築する必要があるのです。タイトルにある「食卓」。食卓は言ってみれば「家族の象徴」のようなものです。レンタル家族の中でも様々な「食卓」がでてきます。紀子は仕事を始めて間もないころにある仕事で望まれた以上の役割をしようとします。結果それは止められるのですが、このシーンが大変印象的でした。最後の食卓のシーンは「彼らにはそう見えている」と捉えていいかと思います。「家族とはなにか」を問いかける作品だと感じました。

40代男性
40代男性

「自殺サークル」の続編として作られた「紀子の食卓」は、自殺サークルでは語られなかった謎が解き明かされる作りになっています。その為、この作品と自作サークルを続けて見た方が分かり易いと思います。本当の家族との生活が退屈で、ネットの掲示板を通して出会った女が運営するレンタル家族ビジネスの関係者になってしまった女子高生と、その姉を探す為に妹もそのビジネスに関わるようになります。吹石一恵さんと吉高由里子が姉妹役を演じており、それぞれのキャラクターを上手に表現している点は良かったです。姉妹は、クミコという女に洗脳されてレンタル家族の一員になるわけですが、退屈な日々でも本来の家族の下で暮らすのが幸せだったのに、レンタル家族という架空の家族像に幸せを求めてしまった辺りは皮肉に感じました。この作品は、家族という輪が人間の社会において、どれだけ大切なものであるのかを問うているように思えます。彼女たちの父親は、家庭を守ろうとしていましたが、妻の自殺や娘たちの失踪など問題だらけで気の毒でした。しかし、この父親も、結局は自分が望む人生の住人を演じていただけではないかという事も示唆されていて、改めて家族関係というのは色々と難しいと感じました。

30代女性
30代女性

父親に反感を持つ紀子を中心とした、家族の物語でした。子どものことを1番に考えていると思い込んでいる親ほど、実は親自身のことしか考えていないのかもしれません。自分の意見が正しいと、子どもに押し付けるだけになってしまうからです。光石研が演じる紀子の父親を見ていてそんな風に思いました。生真面目な紀子を演じるのは吹石一恵です。高校卒業と同時に東京へ行きたいという思いがあります。でもその気持ちは父に反対されてしまいます。父に満たされない承認欲求は学校生活で空回りし、パソコン教室を自由に使えるための運動を一人で行なったりします。時代はパソコンが家庭に普及し始めた頃です。インターネットを使ってパソコンから掲示板への書き込みが出来ることを覚えた紀子は、ハンドルネームをミツコと名乗ります。現実に嫌気がさしていた紀子は、ミツコとして掲示板でやりとりをしている間、なりたい自分になれたような気持ちになります。そして、その気持ちはどんどん強くなりミツコこそが本来の自分であるように考えるようになります。そして家出をして東京へ向かいます。掲示板で知り合った人を頼りにし、上野駅54と名乗る人と出会い、東京で暮らすようになります。紀子、紀子の妹、上野駅54、光石研と、4人の視点から描かれた映画でした。

20代男性
20代男性

この映画は、本当に難解です。様々な考察の仕方がある作品だと思います。この作品の前に、自殺サークルという作品があり、そちらも視聴しているのですが、そちらもまた、難解でした。芯にあるのが、家族についてなのか、人間とは何かなのか、それも今一分かりません。難しいです。しかし、考察サイトなどを見てみると、段々ストーリーや、セリフの意味なども見えてきます。そうしたところで、もう一度見てくると、理解しやすいです。このセリフにはこういう意味があった、集団自殺が、どんな意味があったのかなど、完全ではないにせよ、見えてきます。おそらく、本当の自分というものを見つけることが幸せなのか、それともある程度与えられた役割を果たすことが幸せなのか、視聴者に問いかけるような、そんな思いが、監督にはあるのではないでしょうか。本作は、考察が好きな方は飛びついてくるような、考えることの多い作品です。ただ、そうでない方には、考察サイトを駆使する必要があるでしょう。どちらにせよ、2度、3度と繰り返し見ることで、新たな発見もあるので、味わい深い作品と言えるのではないでしょうか。また、キャストについてですが、吹石一恵さん、吉高由里子さんら、有名な女優がたくさん出演しています。しかし、きちんと、作品の中に溶け込んでおり、演技力も素晴らしく、顔などではなく、演技で選ばれていることがわかります。彼女らの演技にも注目です。最後に余談ですが、前作の、女子高生集団自殺のシーンがこの作品でも流れるのですが、そこで流れる「バラが咲いた」という曲が、なぜかとても怖かったです。この作品の視聴後、恐怖のイメージが、この曲についてしまいました。トラウマになる方もいるのではないでしょうか。

 

まとめ

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